あみもの第三十一号のかんそう 1

こんにちは。田中はるです。

https://twitter.com/tanka_amimono/status/1286677716217913344?s=21

の、言いたいと思った短歌のかんそうを、言ってみたいなあと思いやってみます。変なタイトルのブログでやってしまい本当にすみません。

 

アイドルへ贈るのだという宝石の写真の眩しいひかりに触れる/展翅零

ひかりの外から、ひかりを見ている視点の、カメラみたいで、でも感情があることが好きです。アイドルがいて光る。アイドルに贈る感情としての、写真の中の宝石が光る。その光に触れた人がいて、その光がさらに共有されてここまでくるとき読んだわたしもその遠いひかりに触れられたみたいでうれしかった。

 

シュークリームを無事に食べきる能力が育つ学部にいた人みたい/橙田千尋

「シュークリームを無事に食べきる能力が育つ」まで読んだあと、「学部」がきたから、「〜育つ学部(そ↓だ↑つ↑が↑く↑ぶ↓)」って読み直すのが楽しかった。シュークリームを無事に食べきる能力が育つ学部は絶対ないからツッコミのテンションなのにボケ的でかわいい。って形にうけてしまったんだけど読み返すとシュークリームを無事に食べきるなんてとてもすごいとわたしも思いました。観察して、それでこう言ったのか〜、に戻る。


とびきりの泣きたいときの曲があり大宮駅と紐付いている/コバヤシモカ

こういう言い方があるのか、ってなりました。「大宮駅と紐付いている」!わかる。わかるけど知らなかった。で、曲名は教えてくれないのに大宮駅が具体的で、なんかその感じが本当に「泣きたいときの曲」で「とびきり」で、大宮駅のところに『大宮駅、お前だよ』って急に名指しするみたいな感情があるように思いました。読んでるわたしには言ってない感がよかった。


駅前にとても大きな犬がいてたまには2千円チャージしよ/戸似田一郎

かわいい。よかったね。大きな犬がいて2千円チャージするの関係ないけどそういうことある。ふだんは千円なんだろうな。大きな犬がうれしかったのか、それとも単純に大きいから大きな気分になったのか、「チャージしよ」のちょっとだけテンション上がってる軽い言い方にふふふとなりました。

 

続くかわからないけど1とつけました。できたら続きを書きたいな。

こんにちは〜

昔のフォロワー思い出した。元気かな。名前を覚えてるけどもうあの名前ではないことわかる。いくつもいくつも名前を変えているのを見ていたから、けどそれがどのくらい長い間のことだったのかはまったく思い出せない。1ヶ月や2ヶ月のことだったのかもしれない。何年前かもわからない。今はどんな文体で喋っていますか。

会社休んでた人はいつのまにか元気になって会社きた。

抽象的なことばかり考えているとき脳みそと体を使いすぎて疲れているのだと思う。自我を考えるときより新しい動詞を思いついてたりするときのほうが楽しい。

今は急に筋トレ始めて筋肉痛でなんかぼうっとしており何もできなさそうだったので文章を書きましたが特によくもなかった。ねむたいです

 

おやすみ

 煙草屋の隣の駐車場に猫がいて、あ、猫だ、って思う。猫は駐車場のグレーの地面に体の半分をつけて寝転んでいてふかふかのクリーム色と茶色で多分飼い猫だ。ていって別に首輪とかしてるわけでもないんだけどなんとなく、毛並みいいし、太ってるし。わたしはねこねこ、ってちっちゃい声で言いながら近寄ってみる。でも目が合って、ずっと目が合っていて近づいても逃げないもんだからなんか怖くなってそれ以上寄るのをやめた。猫との接触を諦めて歩きだしてから急に恥ずかしくなってくる。「ねこねこ」ってなんだよ、って思うけどいやでも初めて会った猫の名前とか知らないしねこって呼ぶしかないだろ。ああかわいかったなあ猫。ちょっと話したかったかも。話?
 って考えてたら見慣れない道にいる。あれ。やば、家通り過ぎてる。どうしよう。気づいたのは目の前にまた駐車場があって、でも知らない駐車場だからだった。なんで知らない駐車場だってわかったかっていうと自販機がない。黄色の。道に迷いやすいわたしは今の部屋に引っ越して二年半経った今でもあの黄色の自販機を目印にして、自販機の駐車場の次の十字路を左に曲がるって覚えてなんとか家に帰っている。
 どうしよう。もうどのくらい歩いちゃったんだろう。帰れないかもしれない。だって来た道を戻っても自販機見えない状態でどこをどっちに曲がったらいいのか全然わかんない。困ったな。目の前を見ると知らない家と知らないマンションに挟まれた細長い空が、さっきまでオレンジ色の夕焼けだったのにもう紫色に変わっている。なんか星とかも見えちゃってるし……。
 星!
 星だ。すごい光ってる、ってことは月も見えるのかなって思ってぐるりと見回すけど左にマンション右に二階建ての家で左右の空は見えない。真後ろの空はただ藍色なだけで月も星もなんにも見えなかった。
 あーあ。なんか疲れちゃったな。足も痛いしどうしよう。帰らなきゃ。でも焦っちゃだめだ、って力抜こうとして伸びをして首をぐるぐる回したその時、月が見えた。あっと思う。真上にあったのかあ、だから見えなかったんだ。今日は三日月でとてもかわいい。急に気分が明るくなってくる。今日は猫も月も見れるなんてラッキー!
 さあ気を取り直して歩いてみるぞって気合を入れる。えっと星が見えたほうと反対側に戻るから、てことで星を探すけど今度はどっちを向いても星が見つからない。あれ、どうしよ、星さっきどっちだっけ右がマンション? じゃあ今度は左をマンションにして進むのかな、でも自信がない。こわい。とりあえず進行方向に決めた方の空を見るともう紫でも藍色でもなくなってて色味のないただの濃い灰色だ。泣きそうになってくる。本当に迷っちゃった。帰りたい。帰れるのかな、本格的に涙が滲み出したとき、
「にゃあ」
 って声がする。にゃあ。目線を下げると猫がいた。猫。……猫! あのねこねこの猫だ。かわいい! クリーム色と茶色の毛がふさふさしている。 触ってもいいかな、ってどきどきしながらしゃがむと、猫は合わせていた目をふと逸らして仮・進行方向と反対側に歩いていってしまう。がっかりしていたら猫が振り返った。また「にゃあ」って鳴く。で、見ていると数歩歩いてまた「にゃあ」だ。気になってついていくことにする。かわいいし。
 歩きながら、猫しゃべるかなと思って「こんにちは」って話しかけたら「にゃあん」てちょっとだけ違う鳴き方をした。話せた! そっかこんばんはだよね、って訂正すると今度は何も言わない。よかろうの意味だと思う。猫と話せたのが嬉しくてとことこ歩く彼女の後ろをてこてこついていく。彼女?
 で、歩いてたらまた駐車場が現れた。がっかりした。駐車場を見て道に迷っていたことを思い出したから。悲しくなってたら横になろうとしてた猫がまた寄ってきて今度は「みゃお」だと言う。みゃお? って思って周りを見回すと自販機があった。自販機……自販機だ! 黄色い自販機があった! いつも見えている位置で、向きの、黄色い自販機だ。わたしは猫にお礼を言う。ありがとう、ねこ! ねこは何も言わないでまた横になって体の半分をグレーの地面につけた。ぼんやり白い蛍光灯がねこのお腹を照らしている。何も言わないはよかろうの意だから、猫の名前はねこでよかったんだ。
 猫と話ができて、とっても満足した気持ちで家に急ぐ。待ってるかな、心配してるかな。自販機の駐車場の次の十字路を左に。で、ちゃんとアパートが見えて安心する。外階段をかんかん鳴らして駆け足で四階まで上がる。息が切れるけどはやく猫のこと話したいからあんまり気にならない。405号室の鍵をがちゃがちゃやってドアを開ける。廊下の奥のワンルーム、ソファベッドの上で昨日のわたしがテレビを観ていた。
「ただいま」
「おかえり!」
 遅かったね、と昨日のわたしが言う。やっぱりおかえりって言ってくれる人がいるのはいいなあ。わたしは本当に嬉しくなって今日の出来事を話した。たくさん話した。本当に楽しい一日だったなあ。わたしは満足して、昨日のわたしに溶け込んだ。枕に頭を置いて穏やかな眠りにつく。明日もいい日になるといいねって明日のわたしに声をかけておく。じゃあね。おやすみ。